ショッピングモール前について、辺りを見回しても、未宇は見当たらない。もちろん、連絡先は知らないし、待つしかない。
でも、不意に思った。よかった、間に合った。ハルの家に寄ってからでも間に合った。ハルの家が近くて良かったなと思う。
しばらくすると、後ろの方からチャリンチャリンと自転車のベルの音がした。
振り返ると、淡い黄色のワンピースを着た未宇が、自転車をこいでいた。
「ごめーん!遅くなっちゃった。待った?」
未宇の一言一言が心にじーんとくる。待った?とかいうのは、彼女が彼氏に言うセリフではないか。僕は、意識されてるのか!?など妄想していると、自転車を置いた未宇が手を振って近づいてくる。
「おおー。思ってたよりも、いいね、私服」
一言目がそれだった。今の状態だと、ハルに借りた服だなんて到底言えない。
「未宇ちゃんも、可愛いね、私服」
言った!言おうか考えたが、言えたぞ!
「えへへ。可愛いでしょ」
未宇もそう言いながら照れている。
「じゃあ、行こうー」
未宇に連れられて、タピオカミルクティーの売っているアイス屋を目指す。
そして…未宇がアイス屋の前に立って言った。
「ついたあ!…んん?」
アイス屋の前に小さな看板がたっていた。その看板には、こう書かれていた。
『本日定休日!またのご来店お待ちしております』
「ええっ!定休日…ごめんね、下調べしてなかった…」
未宇は看板の文字を読んですぐに謝ってきた。
「大丈夫だよ。定休日なんて、予想外だね」
と言ったけど、未宇はどうしようか考えはじめた。
(ここは、なにか案をださないと)
僕は自転車置きの近くに自販機があるのを思い出した。
「じゃあ、自転車置きの近くの自販機でなにか買って飲もうよ」
それを聞いた未宇は、目を潤ませて
「ごめんね…でもいいかもね。自販機なら、あったかい飲み物もあるし。今の季節、まだちょっと冷えるしね」
と賛成してくれた。