席替えの日。
パッと右横の席を見る。長い黒髪に白い肌。今は隣に未宇がいる。でも、数分後からは右横を見ても未宇はいないと思うと、なぜか寂しい。
ずっとずっと考えていた。僕は本当に未宇が好きなのだろうか。だとしたら、未宇の隣の席がイケメンになる前に、告白しなくては。
時々、未宇は、こっちを見て、寂しそうな顔をしている(気がする)。
(未宇も、同じ気持ち…ならいいのに…)

「では、席替えしまーす。黒板に書いた席に移動してくださーい。」
先生の声を合図に、みんながガタガタ動き出す。僕の席は1番廊下側の前から2番目。未宇は、窓側の1番後ろ。きっと、これで最後だ、そう思って右横を見る。未宇がこっちをむいていた。そして、
「じゃあ、またね」
と言って、机を運んでいく。長い黒髪しか見えない。数分後から、未宇の隣は僕じゃなくなるし、僕の隣は未宇じゃなくなる。
(もう少し…だけでも…)
隣の席でいたい。そんなのは叶わない望みだって分かってるけど、まだ望んでいたい。
でも、そんな願いは儚く散って、端から端の席に移動してしまった。先生が、
「じゃあ、この席で頑張りましょう」
と言った。終わりだ。もう、しばらくはこの席で…と諦めかけたその時。
遠く離れた席にいる、未宇が手を挙げた。
「先生。私、この席だと、黒板見えません」
その言葉を聞いて、はっとした。僕の席は前の方。チャンスがあるかも知れない。必死に祈った。先生は
「じゃあ…楓彩さん、席変わってもらってもいいですか?」
と聞いた。楓彩ちゃんは
「はい」
と答えた。楓彩ちゃんは僕の隣の席だ。…ということは?
(…うそだ…)
奇跡だ、きっと。凄く嬉しい。
2人は、ガタガタと机を動かす。
そして、さっきまで楓彩ちゃんがいた所に、未宇が来た。そして、
「まただね。もう1回、よろしくね」
といって、凄く嬉しそうに笑った。僕は、
「ほんとだ。また、よろしく」
といって、笑い返した。