夏が好きだと嘘をついた。

朝日さえ見ることが出来ない僕なのに。

夜が明ける前に目を閉じてしまう僕なのに。

冬服が似合う君が好きなのに。










夜明け前の空が好きだ。
シン…と静かで、鼻の奥が少しツンと痛む澄んだ空気。

だけど、少し柔らかい。




僕の口からこぼれ落ちた吐息の中に君はいて、一定のリズムで霞む視界の奥で、登り始めた陽の光が睫毛で乱反射を繰り返し瞬きの度に君をさらに輝かせた。





あの日、素直に綺麗だと思った。





赤い毛糸のマフラーから揺れ落ちそうな襟足も、風に踊らされる前髪も、雪のように澄んだ肌も。





「 卒業、おめでとうございます 」










真っ直ぐ未来を見つめる瞳も。










何もかもが好きだった。



あの日、卒業式で最後に見た冬の制服姿は一定のリズムで霞んでぼやけ、僕の口からこぼれ落ちた半分嘘の言葉と共に、明けてく空へ滲み、霞んでとけた。










≫ end …