きっと誰でもよかったのだ。


高校も卒業間近の11月、受験一色のムードに気圧され保健室登校になりがちだったわたしと、顔面蒼白で逃げ込んできた あづ。 保健の先生が部屋を空けた短い間に、わたしたちは友達になった。


他愛ない話の後、カーテン越しに、堰を切ったように話す あづ の声を聞いた。声が途切れると、ストーブの上のやかんが息を吐く音が目立った。春のように暖められた部屋なのに、白くて硬いシーツだけはいつまでたっても冷たいままだったのを、頬が、妙にリアルに覚えている。


それから4ヶ月、いつも一緒に歩いた。


あづ のことを気に掛けることで、あのカルティックな、受験のことだけを考える日々から逃れられた。


あづ のほうでも、何故か大石くんが彼を全く視界に入れないわたしを苦手とするらしく、一緒にいると近づいてくることが少なくなったので、わたしのそばから離れなかった。


わたしはそれが、例えどんなカタチであれ、人に必要とされるという初めての経験だった。



・・・





一瞬そんなことを思い出していたせいか、ここのシャンディガフはいつもよりしょうがの匂いが強めで甘く感じる。たぶん、ジンジャーエールも手作りなのだろう。ジンジャーエールとビールが一対一だなんて、半分だけしか大人になれないようなカクテルだ、と思った。


あづ が席に戻ると同時に、彼女の前にキール・ロワイヤルが置かれた。グラスの中身は、あづ の髪と同じ色をしていた。


大石くんは、自分の前に置かれてしばらく経つ飲み物を、どうやって飲むべきか考えているようだった。琥珀の液体は、砂糖を盛ったスライスレモンで蓋をされている。


気分のせいか、軽い飲み口のせいか、わたしのグラスはもうほとんど空いていた。


「真理ちゃん、お手洗い空いてたよ、お化粧直してくれば」


クンと背中の方でシャツの裾を引っ張られた。

「うん、じゃ、行ってくる」


素直に立ち上がって店の奥のほうへ行こうとすると、