「うん、でもお店なんてないじゃない」

「大丈夫。もうすぐ駅だから」

「じゃ、お夜食はわたしにご馳走させて」

「考えておきましょう」

「えらそーに」

「あたしは話を聞いてもらえれたから、もうそれで十分なの」

「カクテルが付くならいくらでも聞くよ」


アスファルトにケラケラと2人分の笑い声が響いた。


あづ の言葉の通り、10分も歩くと、いきなり賑やかな通りに出た。駅前らしく、人が行き交っている。こんな時間に外を歩くのは本当に久しぶりだった。


「ファミレスでいい?」


黄色く光る看板を見ながら言うと、彼女は


「あっちじゃだめ?」


とその二軒隣を指差した。


「うどん? そんなんでいいの?」

「うん。あったかいの食べたいの」

「カクテルにうどんかぁ」

「いいのいいの。行こ」


閉店間際らしく少々慌しい中で、わたしは釜たまうどんを食べた。卵がとろとろ、まろやか。麺はつるつるモチモチでおいしかった。あづ は、かけうどんの中にねぎも揚げ玉もうどんが見えなくなるくらいいっぱい乗せて、ものすごく嬉しそうに食べた。あつあつでフーフー言いながら啜った。


「奢るって言ってるんだから」

「これが好きなの」

「学生じゃないんだから」


でも確かに、わたしの釜たまに負けず劣らず美味しそうなトッピングうどんだった。