さささっと2人の近くの木の陰に忍び込む。

ぎりぎり声が聞こえるくらいの距離。

「グスッ…どうしてもだめなの…‍?」

[…ごめん。君のこと、好きになってあげられないから…]

「私の事好きじゃなくてもいいよ!!…それでも、だめなの…‍?」

(うわ、めんどくせー。)

かれこれ5分くらい、こんなんだった。

ていうか、この女…

『うざっ…ボソッ』

やべっ、声に出た。

田宮がこっちに気づいた。

泣きじゃくる女の子は気づいていないみたいだ。

田宮と目が合った。

[…シーッ]

人差し指を口に当てて、俺に合図した。

ここで、俺はいたずら心と同じ男としての正義感から、とある行動に出た。

(いいこと思いついた…ニヤッ)

スッと木の陰から出て2人に近づき、田宮の首に手を回して、驚いた顔の彼女に向かって嬉々として言い放った。

『ごめんねー。これ…俺のだから。』

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『結局、逃げるように屋上来ちゃったけど、良かったの‍?』

[いや、実際助かった。ありがとう。]

溜め息さえ、どこか気品がある。

『こりゃ、女子が惚れるわけだ…ボソッ』

[何か言ったか‍?]

『べーつにー‍?…あ、嘘ついちゃったけど、どーする‍?』

[なにがだ‍?]

『俺のってやつ。本当に俺のになっちゃう‍?』

[この首に回してる手はなんだ。]

『オプションだよ。ね、そーしなよ。俺、いいやつだよ‍?』

[…ま、それもいっか。]

『そーそー!…って……え!‍?』

[なんだよ、お前が言い出したんだろ。]

『い、いやぁ…はは…。』

(まさかOK貰えるなんて思ってねーだろこんなの!!)

『じゃ、交渉成立な。』

[おう。]

そうして俺達は、昼休み明けのチャイムと共に、契約成立のキスをした。