舟達が海から帰ると、舟の祖父母はパーティの用意をして二人を待っていた。
スタイリッシュなリビングは、小さな子供のお誕生会のような可愛らしい装飾が施されている。
そして、メインの真っ白い大きな壁には、“愛ちゃん、ありがとう! また遊びに来てね”と書かれた色とりどりの花々に囲まれたメッセージボードが飾られていた。

愛は様々な感情が混ざり合って泣きそうになった。
でも、こんなに素敵なパーティを準備してくれた舟のおじいちゃま達のためにもめそめそ泣くわけにはいかない。

日本へ着いたらすぐに舟はイギリスへ行ってしまう。
舟が長い休暇を使って日本へ来ている事はちゃんと理解していたけれど、別れがこんなに突然訪れるとは思ってもいなかった。

確実に私の心の中に舟君は住みついているのに、そんな舟君が後三日で居なくなるなんて…


愛はメッセージボードの前で何度も深呼吸をした。
このパーティの間は、何も考えないようにしなきゃ…


「愛ちゃん、大丈夫かい?」


そんな愛に声をかけてきたのは舟のおじいちゃまだった。
すると、おじいちゃま付きの執事の方が、炭酸の泡が優しく舞うスパークリングワインを愛にそっと手渡す。