秋の月は日々戯れに


そう言えば、今日の夜から明日の朝にかけて雪が降るのだと、天気予報が言っていたのを思い出す。


「……満月ってさ、心の綺麗な人にしか見えないんだっけ?」


ボソッと呟かれた同僚の声は彼の耳にも届いていたが、答えることはせずに灰色の空を見上げ続ける。

言いたいことはよく分かる、実際彼にも満月なんて見えてはいない。


「そんなことはありません!満月は、誰にでもどんな人にでも、平等に見えるものです。あの優しい光をたたえる丸い月が、差別なんてするはずがありません!」


どんなに彼女が力説したところで、見えないものは見えない。

それでも同僚も彼も空を見上げ続けていたら、ゆったりと流れる灰色の雲の向こうに、ぼんやりと頼りない光を放つシルエットが見えた。

丸いと言われれば丸いような、でもはっきり言って形まではよく分からない月が、確かに雲の向こうで淡い光を放っている。


「ほら、あれです!見えましたか?」


見えたというか……まあ、うん――何とも言えない感想を胸に彼が視線を下ろすと、同僚もまた似たようなタイミングで視線を下ろした。