秋の月は日々戯れに


情けない悲鳴をあげてしまったこともあって余計に。


「……そうですか。なら、幽霊らしく突然消えることもできるんですよね?」


苛立ち紛れに放った問いに、彼女が仕方のない子供を見るような目で彼を見つめる。


「一つ訂正しておきますが、わたしはどこからともなく突然現れたわけではなく、テーブルのところからここまで普通に歩いてきただけです。パッと出たり消えたりした覚えは一度もありませんよ」


確かにその通りなのだが“やれやれ”とか“仕方がない人ですね”とでも言いたげなその顔がどうにもしゃくに触る。

だから子供っぽいと分かっていながらも、苛立ち紛れにふいっと視線を逸らしたら、また彼女がふふっと笑みを零した。


「そんな子供みたいなところも可愛いです。ああ、そろそろですよ」


“そろそろ”とはなんのことかと、訝しむように彼の視線が動いたとき、カタカタピーピーと、お湯が沸騰したことを知らせてやかんが鳴り響いた。

彼女が「ほら」と得意げに笑うと、反対に彼の表情はムスっと険しくなる。

いつの間にやら彼女の機嫌が治ると、今度は彼の不機嫌値が増していった。



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