秋の月は日々戯れに



「そうですね、実家に帰ったらどうですか。実家ってことは自分の家でしょ。赤の他人である俺の家にいるよりも、ずっと自然だと思います」


“赤の他人”を強調して言ったら、彼女の頬がますます膨れて、まるで頬袋いっぱいにどんぐりを詰め込んだリスみたいになった。


「赤の他人同士が一緒になることを結婚といい、結婚して一緒になった二人を家族と呼びます!!」


一体何の宣言だ――。


言葉にする代わりにため息をついて「そういうのは……」と口を開いたところで、目の前に立ちはだかっていた彼女が、突然倒れこむようにして抱きついてきた。

途端に背筋がゾクゾクっとして、全身に震えが走る。


「どうせあなたは“そういうのは人間同士だから成立するのであって、幽霊には適用外です”とか、それはそれは冷め切った顔で言うんでしょうけれど、わたしは今怒っているので、そのセリフをいつものように寛大な心で受け止めることはできそうにありません!」


「だから言わせません」と続けた彼女だが、自分で言う分には構わないのだろうか――。