秋の月は日々戯れに


それに白いコートの女性の隣には男性も立っていて、二人の腕は幸せそうに絡み合っている。

それを見るともなしに見ていたら、またため息が零れ落ちた。

世間にはあんなに幸せそうなカップルが溢れているのに、なぜ自分は訳の分からない幽霊に嫁入り気分でとり憑かれなければいけないのか。

仕事の疲れよりなにより、今はそのことに対する精神的疲れが大きい。

やっぱり、知らないうちに生気を吸い取られているんじゃないかと思いながら歩いていくと、段々と外灯が少なくなってきて、車通りも人通りもなくなってくる。

遠くの方にコンビニの明かりが見えてきて、それを過ぎればやがて公園に辿り着く。

公園の中を突っ切れば近道となり、そこを通らなければ、ぐるりと回ることになってやや距離が出る。

迷うことなく、公園の外側を回る方の道を選んだ。

一度も近道を通らずに、どちらかといえば遠回りしながらの帰り道は、思った以上に時間がかかり、また思っていた以上に体力を消費した。

疲れた体を引きずるようにして家に入ると、当然のように”ただいま”の言葉もなく、ネクタイを外しながら廊下を進んでいく。