秋の月は日々戯れに


どれだけハイペースで飲んでいたんだと、改めてげんなりした顔でもう見えなくなったタクシーを追いかけるように視線を動かすと、一つため息を零してから歩き出す。

何となく真っ直ぐ家に帰る気にはなれなくて、悩んだ末に、二軒目として行く予定だった中華居酒屋に一人で向かった。

これもまた裏道を通ればさほど時間をかけずに着ける距離で、赤い幟とぼんやり灯った提灯飾りが見えてくると、自然と歩調が早まる。

引き戸を開けた瞬間の威勢のいい挨拶は最早「しゃいっ!」にしか聞こえなくて、四人がけのテーブル席が四つだけの店内を奥まで進んで、一つだけ空いていたテーブルを確保する。

水とおしぼりを持って来た若い店員に、肉団子とせっかくなので紹興酒を一杯注文すると、威勢のいい声がそのまま厨房へと注文を伝えた。

おしぼりで手を拭いている間に早速紹興酒が運ばれてきて、ちみちみと飲んでいるうちに肉団子もやって来る。

トロッとかかった熱々のあんからは黒酢の甘酸っぱい香りが漂っていて、箸で掴んだ肉団子は外側がカリッと揚がっているのに、中はふわりと柔らかい。

齧った瞬間口内に広がる熱さをはふはふと逃がしながら、そこに紹興酒を流し込む。