調子よくハイペースに飲み続けた同僚は、やはりと言うべきか、二軒目に行く前に酔いつぶれ、彼の肩に担がれるようにして焼き鳥屋を出た。
そんな状態でも、同僚は約束をきっちり守って彼に財布は出させない。
そこまでは良かったのだが、それから電池が切れたように、何を言ってもむにゃむにゃしか答えなくなった同僚のスマートフォンが、タイミング悪く何度も何度も着信を知らせて鳴り響く。
液晶に表示されていた名前は“たっくん”。
何度もかかってくることから、もしかしたら大事な用事かもしれないと彼が必死に起こしても、同僚は安らかにむにゃむにゃ言うばかりでちっとも目を覚まさない。
そんな攻防を繰り広げているうちに、いつの間にか着信は止んでいた。
「ほら、頭気をつけろ。えっと行き先は…………おい、家の場所どの辺だ。こら起きろ!せめて自分の家の場所くらい言えっての」
店の前に呼んだタクシーに同僚を押し込み、激しく揺すり起こして何とか家の場所を運転手に伝えさせると、疲れきったため息で走り去るタクシーを見送る。
腕時計に視線を落とせば、まだ思ったほど時間は経っていなかった。



