秋の月は日々戯れに


焼き鳥にビールは、確かによく合う。

特にこの店の焼き鳥は、大将のたくましいガタイからは想像もできないような繊細な調味が絶妙で美味しい。

酒によく合う味付けは、当然白飯にもよく合って、カウンターの隅に腰掛けている若者は、先程から一心不乱にどんぶり飯をかき込んでいる。

そこから三つ程椅子を開けて座る同僚は、気づけば二杯目をオーダーしていた。


「でもまあ、あんたには関係ないか。今更モテる必要ないもんね。もう奥さんいるし」


口の中のビールを吹き出しかけて、慌てて飲み込む。

いい加減にしろよこいつという恨みを込めて隣に視線を送ったら、同僚は届いたばかりのジョッキをまた豪快に傾けていた。


「……なんか、あった?」


本当に言いたかったのはそんなセリフではなかったのだが、気がついたら問いかけていた。

焼き鳥が旨いから酒が進む、それだけではないような、どことなくやけくそな雰囲気が漂う飲みっぷり。

同僚は二杯目のビールで勢いよく喉を鳴らしてから、また「ぷはー」と息を吐いてジョッキをテーブルに置いた。

何気なく覗き込んだ顔は、心なしか目元が赤い。