秋の月は日々戯れに


昔気質の料理人のような風体だが、ひとたび笑えば親しみやすく、話せば気さくな人だった。


「あっ、はーい!そこに置いておいてください」


「まなちゃんはうちに来ると、梅酒ばっかりだな」とどこか嬉しそうに笑いながら、大将はお盆をカウンターに置いて厨房に引っ込む。


「先輩さん、お先に一つ取ってください」


言われるがまま、お盆の上から一つ器を取ると、カウンターから出て来た受付嬢がお盆を手にして座敷の方に向かう。


「はーい皆さん、お待ちかねのおでんですよー!」


受付嬢の声に、ますます座敷の喧騒が強まったのを感じながら、彼は器の中身をじっくりと眺めた。

特に変わったものが入っているわけではない、それはおそらくとてもスタンダードなおでん。

出汁はとてもいい香りで、具材もいい具合に煮えている。

それまで食欲がなくてあまり料理を摘んでいなかった彼も、これには自然と箸が伸びた。

黄金色の大根に箸を入れると、驚く程すんなりと割れて、おまけに中までちゃんと出汁が染みている。

大根の次はふわふわのつみれ、その次はちくわにこんにゃくと順番に口に運んでいくと、見えてきたふっくらとしたフォルムに思わず箸が止まった。