秋の月は日々戯れに



「お疲れ様です、先輩さん」


顔を上げると、笑顔の受付嬢が立っていた。


「お隣、いいですか?」


了承の意味を込めて頷くと「では、失礼します」と受付嬢は彼の隣の椅子に腰を下ろした。

二人が並んで腰掛けているのはカウンター席で、後ろの座敷では、今も変わらずどんちゃん騒ぎ。


「皆さん、盛り上がっていますね」


後ろをチラッと振り返って笑う受付嬢に、彼は


「もうこれは騒音の域に達してないか?」


酔っ払った男共が乱痴気騒ぎするとは、誰が懸念していたのだったか――彼も自分で気づかないうちに雰囲気に飲まれて飲みすぎたのか、記憶があやふやではっきりと思い出せない。


「そんなことはないですよ。大将も、こんなに賑やかなのは久しぶりだって喜んでいます。いつもは、常連のおじさま達ばかりが集まるので、比較的店内は静かなんだそうです」


仕事帰りの男達が、おでんをつまみにしみじみと飲んで帰る、それが本来のこの店の姿であるらしい。


「若い人を見ていると元気になるって、大将は大張り切りですよ。今日のおでんは、特に期待していいってさっき言っていました。さやかさんの太鼓判もついていますしね」