秋の月は日々戯れに



「焼き鳥はやっぱりタレ!」

「俺は塩派かな」


今しがた目の前で大将が焼いてくれたばかりの焼き鳥を、同僚はハグハグと美味しそうに噛み締めてビールを勢いよく流し込む。

上唇に泡をつけて満足げに「ぷはー!」と言うのはお約束だ。


「やっぱりビールさいっっこう!!焼き鳥にはビール!ビールには焼き鳥だよねー」


ビール一口でもう酔っているのかと疑いたくなるほど、同僚は先程からやたらハイテンションな声を上げている。

一口とは言っても、既にジョッキの半分はなくなっているが。


「ちょっとペース早くないか?酔いつぶれても担いでやれないぞ。俺、筋肉の代わりに脳みそ発達させた系だから」

「体鍛えてる奴は皆総じて脳筋って考え、安直すぎじゃない?てか、今時はちょっとくらい筋肉ある方がモテるよ。草食系の時代は過ぎ去ったに等しい」


豪快にジョッキを傾けながら焼き鳥を頬張る同僚に、口の端にタレがついているのを教えてやるべきかどうか悩みながら、彼もまた塩味の焼き鳥をつまみにビールを一口。