秋の月は日々戯れに


あらゆる方向から向けられるニヤニヤした視線は、黙殺することにした。


「愛を育んでるとこ悪いな、邪魔するぞ」


聞こえた声に彼が顔を上げると、ニヤニヤ顔の上司と先輩が並んで立っていた。


「気持ち悪いこと言わないでください」


不快感を全面に出して眉根を寄せる彼に「だって、なあ?」と相変わらず上司も先輩もニヤついている。


「盛大な告白だったからな」


「オレが一番好きっす!」と後輩の声真似をして遊ぶ二人を睨みつけてから、彼は諦めたように視線を外す。

変に反応するとますます調子にのるのは目に見えているので、こういう時は無視するに限る。

しばらくすると、反応がなくてつまらん!と彼が思った通りのことを口にして、二人は声真似して遊ぶのをやめた。


「そういやあお前、結婚してんだよなー。どうだ、結婚生活は。順調か?」


なんだかちっとも興味もやる気もない様子で聞いてくる上司に、彼は思わずジト目を向ける。


「なんだよー。人がせっかく惚気る機会をくれてやったというのに」

「いいですよ。そんな余計な機会くれなくて」