せっかくもう一度話題を変えようと思ったのに、同僚は彼の声など耳に入っていない様子で語り始める。
「もう満足したから元に戻りましょう!なんて突然言われたら、なんかこう……もやっとしない?でもこっちから言い出したんだから、あたしが言わないとずっとこのままなわけだし。でもなんかこう……」
酔っているからなのか、それとも難しく考えすぎなのか、どうやら同僚は負のスパイラルに嵌っているらしいと知れる。
こういう時彼女ならきっと、明るく笑って――
「これからもよろしく、でいいんじゃないのか?あいつはきっと、お前が自分の隣に戻ってくるなら、それだけでいいんだと思うぞ」
むしろ、きっかけがなくて悩んでいるなんて言ったら、後輩の方から喜び勇んで飛びついてくることが目に見えている。
告げられる言葉が“さようなら”だったらどうしようと後輩は悩んでいたが、初めからきっと、同僚の中にその選択肢は存在しない。
ただ実感したかっただけなのだ。
後輩が自分にとって、どれほど大切な存在なのか。
そのための距離は、それを実感した今となっては、同僚にとって超えるに越えられないハードルと化している。



