それから自分も一つ皿を確保して料理を取り分けると、箸で摘んだ唐揚げを美味しそうに頬張りながら彼の方を伺った。
「別に、喧嘩してるわけじゃないって何度も言っただろ」
いい加減、このやり取りにもうんざりしてくる。
なにせ、喧嘩していると思っているのは同僚だけではないのだ。
「それよりそっちはどうなんだよ。あいつと、このままでいいのか?春にはもうこっちにいないんだぞ」
無理やり話題転換を試みると、不本意な話題だったのか、同僚はほんの少しだけ不機嫌そうに顔を歪めて「分かってるっての」とカシスオレンジを煽った。
「春までには、ちゃんとしようって思ってる。でも、きっかけが掴めないって前にも言ったでしょ。難しいの!あんたが思ってるよりずっと」
いつもよりあたりがキツい気がするのは、同僚が酔っているからなのか。
とにかく、その不機嫌そうな表情と声音から、この話題はこれ以上続けるべきではないと彼は判断する。
「ところでその唐揚げ、」
「でもさ、きっかけさえ掴めたらってあたしも常々思ってるわけなんだよ。だってさ、春にはいなくなるわけでしょ?このまま距離が離れたら、もう自然消滅の流れじゃん。でもそれは嫌だから、あたしとしてもきっかけが……」



