「どっちが先に犯人を当てられるか、推理勝負をしましょう」
彼女が得意げに笑う。
そんな風に勝負をふっかけてくるなんて、珍しいと彼は思った。
無視することもできたけれど、その得意げな笑みが妙に鼻についたので、彼は洗い終わった皿を拭かずにカゴに置いたまま、濡れた手だけを拭いてテレビの方へ向かう。
「そんな風に、得意げに笑っていられるのも今の内ですからね」
とりあえずそんな風に返したら、彼女はふふっと楽しそうに笑って、テレビの画面に向き直った。
彼女からほどよく距離を取って、彼も腰を下ろす。
一人だった時は、見るともなしにつけていたテレビが、彼女と出会ってからは、楽しみの一つに変わった。
主にかかっているのは、刑事ドラマだけれど。
「せっかくなので、何か楽しいルールでもつけましょうか」
怪訝そうに顔をしかめる彼に、顔だけで振り返った彼女が笑う。
「何か、ご希望はありますか?」
「そもそも、そんなルール必要ですか?」
問いに問いで返したら、彼女はただ笑って「だって楽しいでしょ、その方が」と言った。



