秋の月は日々戯れに


そんな風に割り切れる彼女とは違って、彼の中には消化しきれないモヤモヤしたものが溜まっていく。


「あなたは、それではご不満ですか?」


なんだか自分が、駄々をこねている子供のように思えてきて、彼はむっつりと押し黙ったまま手を動かす。


「面倒くさがりで、他人なんて一切興味がないような顔をしていたあなたが、そんなにもあの三人の事を気にするなんて。これは、とてもいい傾向ですね」


どこか嬉しそうに、彼女は言った。


「……面倒くさがりなのは認めますけど、他人に一切興味がないような顔をしていた覚えはありません」

「じゃあ無自覚だったんですね。無自覚ほど恐ろしいものはありませんよ」


なんだかバカにされているような気がして、彼はまたむっつりと押し黙る。

不機嫌全開の顔とオーラで、苛立ちをぶつけるようにガシガシと洗い物をしていたら、いつの間にか彼女が隣からいなくなっていた。

泡だらけのスポンジを持ったままで振り返ると、テレビがついていて、一番画面が見やすい定位置に、彼女がちょこんと座っている。