秋の月は日々戯れに


そう言って、二人が残していったカップをシンクに運ぶ彼女に、彼は納得いかなそうな表情を向ける。


「随分と不満そうですね」


顔だけで振り返った彼女が、可笑しそうにクスリと笑った。


「別に不満ってほどじゃないですけど……。もう少しスッキリ解決するかとは思っていたので」


ふふっと笑って、彼女はシンクに向き直る。

その手がスポンジに伸びたところで、彼は彼女を押しのけるようにしてシンクに立った。

彼女は何も言わないで、ただ嬉しそうに笑って脇に避ける。


「わたし達にできるのは、解決のお手伝い、言ってみればきっかけ作りだけですよ。本当の解決に至るためには、当事者同士に頑張っていただかないと。あまり手を出しすぎるのは、お節介というものです」

「……だから、あれで良かったって言うんですか」


カップやカレー皿を洗う彼の隣で、彼女は笑って「はい」と頷く。


「わたし達がスッキリするかどうかなんて、問題の解決には一切関係ありませんからね」