秋の月は日々戯れに


その親密さ故に、彼も初めは勘違いしてしまっていたのだから。


「不幸な事故ってことですか」


ポツリと呟いた彼の言葉に「さて、それはどうでしょう」返す彼女。


「お互いがお互いにとってどれほど大切な存在であるか、確認し合うには、いい機会だったのかもしれません。まあ、雨降って地固まると決着しなければ、意味がありませんけれど」


なんだか含みのある言い方に、彼が問い返そうとすると、それを遮るように彼女が


「あなたの方は、どうだったんですか?」


なんだか勢いが削がれてしまったので、彼は開きかけた口を一度閉じて、先ほど後輩と交わした会話を思い起こす。


「……待ってるって、言ってましたかね」


――今でもさやかちゃんが、オレの事を好きでいてくれるなら。


後輩の声が頭の中に蘇って、ついでに泣きそうに歪んだ無理やりな笑顔も一緒に浮かんでくる。

彼の言葉を聞いて、彼女は大変満足そうに「そうですか」と笑った。


「それならば、問題はもう解決したと言ってもいいでしょう。わたし達が手を出せるのは、ここまでです」