秋の月は日々戯れに



「お前、今日はよく乗り込んでこなかったな」


アパートのすぐ目の前にある公園で、後輩は白い息を吐きながら彼を待っていた。


「何となく、さやかちゃんがいそうだなーって思ったんす。彼氏のカン、的な」


そう言って笑った後輩は、彼に温かい缶コーヒーを差し出した。


「そこのコンビニで買ってきたばっかりなんで、まだ温かいっすよ。先輩、ブラックでいいっすよね」


受け取った缶は、温かいというよりは少し熱いくらいで、彼は思わず両方の手を行ったり来たりさせる。

促されるままにベンチに腰を下ろすと、後輩が早速プルタブを開けてコーヒーを飲んだ。


「……しばらく、距離を置こうって言われたんす」


ポツリとそう零して、後輩は見るともなしに公園の遊具を見つめる。

その眼差しは、どこか捨てられた子犬を思わせる寂しさに満ちていた。


「でもさやかちゃん、嫌いになったわけじゃないって言うんすよ。……嫌いになったんじゃないけど、今は……時間と、距離が必要だって」


そう言って力なく笑って、後輩はまたコーヒーを飲む。

煽るようなその飲み方は、手に持っている缶をアルコールと勘違いしそうになるが、後輩が持っているのは、彼のと同じブラックのコーヒー。

この状況でよくアルコールを選ばなかったなと彼が指摘すると、後輩は笑って、今は飲むと止まらなくなるのだと答えた。