秋の月は日々戯れに


否定しないということは、彼の指摘は間違っていなかったということ。


「もしかしたら、本当にあったかもしれないじゃないですか」

「でも覚えてないんでしょ?なら、あったという証拠にはなりません」

「覚えていないということは、なかったという証拠にもなりません!」


引き下がらない彼女に、彼は呆れたため息を小さくつく。

彼女の言う通り、覚えていないということは、あったという証拠にも、なかったという証拠にもなりはしない。

彼女が語る過去の話は、全て“あったかもしれない”仮定の話。

それを彼女は、さも本当にあったことのように得意げに語る。


「もしかしたら、ラブレターどころの騒ぎではなかったかもしれません。お付き合いしている人が既にいて、なんなら結婚だってしていて、子供もいたかも!」

「旦那さんはきっと、苦労したでしょうね」


なんの感慨もなくそう返したら「これでもまだダメですか!なら、どんなエピソードであればヤキモチを焼いてくれるんですか!」と彼女が喚く。


「作り話でヤキモチなんて焼きません」


同じセリフをもう一度繰り返してやると、彼女は大変悔しそうにむくれた。

そんな時、彼のポケットの中でスマートフォンが震える。