秋の月は日々戯れに


それを聞くともなしに聞きながら、彼は淹れたてのコーヒーを啜った。


「ちなみにわたしは中学生の頃、別の学校の方からラブレターをもらったことがあります」


突然彼女が、得意げに胸を張ってそんなことを言った。

またこの幽霊は――なんて思いながら、適当に返事をしようとして、ふと記憶の糸を辿る。


「……生きていた頃の記憶はないって、言ってませんでしたっけ?」


いつだったか、刑事ドラマの犯人当てが得意だと言った彼女は、そのあとに国語の成績の話をしていた。

でも、生きていた頃の記憶は上書きされるようになくなって、今では自分の名前すら思い出せないのだと言っていたのと、その話は矛盾する。

カップを持つ手を下ろして隣を見ると、彼女はとても面白くなさそうな顔をしていた。


「妻が過去の恋愛エピソードを暴露したというのに、なぜヤキモチの一つも焼いてくれないんですか?」


――ああ、なるほど。ヤキモチを焼かせる為だけに、わざわざそんな話を。


「作り話でヤキモチなんて焼きません」


彼の言葉に、途端に彼女はムスっと膨れる。