秋の月は日々戯れに


彼を見上げてにっこり笑って、彼女は言う。


「どれほど優れて見える人でも、見えている部分だけが、全てではないですからね」


ふふっと意味ありげに、彼女は笑ってみせる。

それを俺に言ってどうするんだ――なんて彼が思っていると、唐突に


「さやかさんは、とんでもない勘違いをしています!」


受付嬢の大きな声が部屋に響いた。

彼がビックリして視線を向けると、同僚も同じように驚いた顔をしていて、ただ彼女だけが、この場にそぐわない穏やかな笑みを浮かべていた。


「さやかさんが、私をそんな風に思ってくれていたのはとても嬉しいです。でも!私はそんなに素敵な人ではありません」


それから受付嬢は、自分について語った。

本当は怒りっぽいのだとか、怒ると昔は手の付けられない暴れん坊だったとか、中学生の頃は盛大にグレていたとか、そんな話を――。

驚いたように目を見開いて固まったまま、同僚はその話を聞いていた。

今の受付嬢からは想像もできないようなエピソードが、次々と披露されていく。