不意に衣擦れの音がして彼が首だけで振り返ると、視線は逸らしたままの同僚が、それでもゆっくりと腰を下ろすのが見えた。
それが合図だったかのように、受付嬢は俯いていた顔を上げる。
同僚も視線を動かすと、ようやく二人の視線が交わった。
「あ、の……さやかさんは、もう、拓の事を……嫌いに、なってしまいましたか?」
ようやく聞こえた受付嬢の絞り出すような声に、ほんの少しだけ、同僚の表情が悲しげに歪んだ。
「でも、本当に違うんです……!私と拓は、ただの従兄弟で、それ以上でもそれ以下でもなくて。今までもずっとそうでしたし、これからもずっとそうなんです!だから、拓が浮気だなんて、そんなのは……」
その先を遮るように、同僚が「そうだよね……」とポツリ呟いた。
「たっくんが浮気なんて、するわけないよね。……分かってた。でも、どうしても信じきれなかった」
受付嬢を真っ直ぐに見つめて、どこか泣きそうな顔で、同僚が続ける。
「愛美ちゃんみたいな素敵な人となら、そういうこともあるかもしれないって。そんな思いが、どうしても振り切れなかったの。……ほらあたし、割りとなんでも適当だし、余りおしゃれとかにも興味ないし、料理も下手だし、全然……ダメだから」



