秋の月は日々戯れに


自称彼の妻であるところの彼女は、日々彼の妻であることを楽しんでいる。

例え、本当の妻ではなく、この世に生きてすらいなくても――。


「電話、もしあったら使えますか?」


唐突な彼の質問に、彼女はコテっと首を傾げる。


「携帯電話のことでしょうか?」

「じゃなくて、固定電話の方です。もしこの家に固定電話をつけたとしたら、あなたは使えますか」


もう一度言い直すと、彼女は驚いたように目を丸くした。


「でも、あなたは携帯電話を持っていますよね。それなら、家に電話は必要ないのでは?」

「だから俺が使うんじゃなくて、あなたが使うんですよ。使えればの話ですけど」


彼女は驚いた表情のまま、あっちこっちに忙しなく視線を動かす。


「えっと……多分、使えるとは……思います」


妙に歯切れが悪い。


「使えないなら正直に言ってください」


そう言って反応を伺うように彼女の顔を見ていたら、忙しなくあちこちに動いていた視線が、ようやく自分の膝の上で止まった。


「それで、使えるんですか?使えないんですか?変な意地張らないで、正直に答えてください」