つけっぱなしのテレビに、固定電話の受話器を耳に押し当てて、緊迫した様子を醸し出す女性が映し出される。
「あっ、ついにかかってきましたね!犯人からの電話が」
そう言って嬉々としてテレビに向き直った彼女は、食い入るように画面を見つめる。
「好きですね、刑事もの」
彼がテレビをつければ、特に文句もなく同じものを見ている彼女だが、刑事ドラマが入る時だけは、率先して自分からチャンネルを合わせ、テレビの前に陣取っている。
「あなたもお好きでしょう?いつだったか、クイズ番組か刑事ドラマかで迷ったとき、刑事ドラマを選んでいましたもんね」
そう言って彼女は笑う。
彼女の言う“いつだったか”が実際いつの話なのかは分からないが、彼としては、別に特別好きでもない。
けれど彼女はきっと、その瞬間から彼が刑事ドラマを好きなのだと思い込んで、自分も同じ物を好きになることで、わたしはとても妻っぽい!――などと喜んでいたのだろう。
容易に想像できてしまった彼女の考えは、あながち間違っていないような気がして、呆れると同時になんだか笑えてしまう。



