「なんでわざわざここに呼ぶんですか」
受付嬢が帰り、食事の片付けも終えてコーヒーで一息ついたところで、彼が問いかける。
テレビの方を向いていた彼女は、振り返って「いけませんか?」と首を傾げた。
「適当な場所に呼び出して、二人で会わせたらいいじゃないですか。俺の家に呼ぶ必要がどこにあるんですか」
あえて“俺の”とつけたことで、ここは自分の家であるということを主張したつもりだったのだが、きっと彼女には届いていない。
完全にテレビに背を向けて座り直した彼女と、彼は向かい合う。
「嘘はよくありません。それは、のちのちの関係に響きますからね。だから、呼び出した張本人であるあなたは、その場にいなければいけないわけです」
何となく予想はしていたが、やはり呼び出すのは彼の仕事らしい。
「でも、女性二人に男があなた一人だなんて、どこからどう見ても修羅場です。しかも、まさに受付嬢さんと同僚さんは、浮気についての話をしようとしています」
確かに、その状態で浮気の話なんてされたら、彼が浮気をした張本人だと思われかねない。
いや、確実に思われる。



