秋の月は日々戯れに



「春までになんとかしないと、もうおしまいなんです。でもこのままじゃ、その“おしまい”に向かってまっしぐらなんです!だからお願いします。どうか私に、起死回生の案を授けてください!!」


一旦テーブルから離れた受付嬢が、そのまま床に手をついて深々と頭を下げる。

どこぞの旅館の女将のような、とても美しい所作だった。


「あっ、えっと……顔、いえ頭を上げてください」


なんだかワタワタしている彼女は、受付嬢を見て、それから彼の方を見て、それからまた受付嬢に視線を移してと忙しない。

言われた通りに顔を上げた受付嬢だが、その体制はまたいつでも頭を下げられるくらい低いままだった。


「それで、なんでしたっけ……?」

「なんでこっち見るんですか」


混乱しているのか、なぜか彼女は彼の方を伺う。

仕方がないので、彼はため息混じりに受付嬢の話を簡単にまとめてもう一度話してやる。

ジッと聞き入ってしばらく黙り込んでいた彼女は、やがてすっくと立ち上がった。


「分かりました。では、ここに呼びましょう!」

「えっ、誰をですか……?」

「もちろん、決まっているでしょう」


嫌な予感しかしていない彼をよそに、彼女は先程までの狼狽えっぷりなどまるでなかったかのように、得意げに笑った。





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