秋の月は日々戯れに


変わり身が早すぎて呆れるほどに。


「おでんですか、いいですね!是非とも、ご一緒させてください」


先に立っていた彼がドアを開けると、部屋の中に満ちていた出汁のいい香りが、一気に廊下へと流れてきた。

匂いはそんなに悪くない。

むしろ、出汁の“いい香り”がしているということは、今日の夕飯は彼女の手作りはないということか。


「そう言えば、相談したいことがあっていらしたんですよね」

「はい、そうなんです!是非、奥様にご相談したいことが」

「あっ、わたしにですか?」


彼女は驚いたように目を見開く。

それから、着替えを手にして部屋を出ていこうとした彼に視線を移した。


「何ですか?」


何か言いたげな視線に疑問符を返すと、彼女は言いかけた言葉を飲み込むように一度口を開いたり閉じたりしてから


「お風呂は、ご飯の後でお願いしますね。おでんはもう、できていますから」

「分かってますよ。ところで、今日のおでんは」


そこまで言いかけて彼が思わず口を噤んでしまうほど、彼女は不機嫌全開で膨れた。


「わたしは、油揚げにお餅を詰めました!」

「……あっ、はい」