秋の月は日々戯れに


まさか、ここで再びスイッチが入るとは思わなかった。

それに流石にちょっと言いすぎじゃないかとは思ったが、受付嬢の熱弁は止まらない。


「拓だけではありません!このままでは、私にだって明るい未来は…………いやあー!!もう考えるだけで恐ろしいです!」


突然の悲鳴に彼はビクッと肩を揺らし、慌てて周りを伺う。

幸い人の姿はなかったので、勘違いで警察を呼ばれるような事態にはならなそうだ。

ホッと一安心して息をついたところで、コンビニの明かりが見えてくる。

ここでまた悲鳴をあげられたらたまらないと、彼が密かに隣の様子を伺うと、受付嬢は黙り込んでぼんやりとコンビニの中を見つめていた。

レジには、彼も顔を知る学生バイトが立っていたが、受付嬢が見ていたのはもっと入口に近い方。

アイス売り場で真剣な顔をしている若い男と、その隣で同じような表情をしている男より少し年上な印象の女性。

この寒いのにアイスか――と彼は思ったが、きっと受付嬢が見つめていたのは、そんな理由からではない。


「何か、欲しいものでもあるのか?」


答えは分かっていたけれど、一応聞いてみる。

彼の方を向いた受付嬢はニコッと笑って、思った通り首を横に振った。



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