秋の月は日々戯れに


同僚や後輩に受付嬢まで、みんなして色んな問題を持ち込んでは彼の日常を狂わせる。

今までは、自分の仕事の他に押し付けられた雑務もこなして、帰りにコンビニに寄って夕飯を買い、家に帰ればそれを食べて寝るだけの生活だったのに。

休みの日には昼過ぎまで寝て、起きてもすることといえばテレビを見るくらい。

たまに日用品の買い物に出たりもするが、ほとんどの場合一人きりで家にいることが多かった。

それが当たり前だったはずなのに、夜の公園で幽霊に出会ってから、嫁入り気分でとり憑いてきた彼女と一緒に暮らすようになってから、その日常が変わった。

家に帰れば常に彼女がいて、休みの日と言わずいつでも人が訪ねてくる。

飲みに行くことや、食事に行く回数も格段に増えた。

おかげで、仕事はできるが付き合いが悪いという彼の社内評判も変わりつつある。

そんな日常が、いつの間にか当たり前になろうとしていた。


「……なんだかな」


彼は、もう一度同じ言葉を呟く。

心はちっとも休まらないけれど、変わり始めた日常に、不思議と適応している自分がいる。

煩わしいとか、面倒くさいなどと思う暇もなく、日々は目まぐるしく過ぎて行く――――。