秋の月は日々戯れに


まだ外が完全に暗くなる前に、受付嬢は約束通り後輩を連れて彼の家を出た。

実家住まいだという受付嬢が呼んだ車に詰め込まれてもなお、後輩は「さやかちゃん……」と同僚の名前を呼びながら泣いていて。

そんな後輩の代わりに「お世話になりました」と深々と頭を下げた受付嬢に、彼女は笑顔で「また遊びに来てください」と手を振っていた。

そして久しぶりに二人きりになった部屋で――――


「……何ですか」

「スキンシップです!」


ここぞとばかりに、彼女は彼の傍らにピッタリと寄り添っていた。


「近頃来客が多くて、中々二人でゆっくりできませんでしたからね。来客が多いのはとてもいいことなんですけれど、たまには夫婦の時間も大切にしないと」


そう言って彼の腕に自分の腕を絡め、彼女は満足そうに微笑む。


「俺達、夫婦じゃないですよね」


彼は一応いつも通りに否定してみるが、彼女はもう前のように怒ったりしない。

ただ穏やかに笑って


「今更ですね」