秋の月は日々戯れに



「大人になってから親しい友人を作るのは、とても難しいと聞いたことがあります。上辺だけの付き合いに慣れてしまったら、深く関わって心の内をさらけ出すのが怖くなるのでしょう。でもそれって、なんだか寂しいですよね」


そう言って彼女は、怒れる受付嬢と泣き喚く後輩の方に視線を移した。


「あなたには、あなたの人生を彩ってくれる親しい友人を、たくさん作ってもらいたいんです。だから、他人と関わりあうことを面倒くさいなんて、思わないでください」


また彼に視線を戻し、彼女はにっこりと笑ってみせる。

その笑顔をなんとなくしばらく見つめていたら、彼女はふふっと笑って、唐突に顔を近づけてきた。


「そんなに見つめられると照れてしまいますが、愛する妻の顔を目にも脳にも焼き付けたいと言うのであれば、どうぞ存分に見つめてください」


彼女の言葉に我に返った彼は僅かに身を引くと、思い出したようにふいっと視線を逸らして


「そんなこと、あるわけないでしょ」


小さく呟いた。



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