秋の月は日々戯れに


目が覚めたら突然怒鳴り散らされて、後輩は困惑顔。

それでも受付嬢の顔を見ていたら色々とこみ上げてくるものがあったのか


「さやか、ちゃん……。ああ、そうだ。……さやかちゃんは、もう……」


同僚の名前を呟きながら、またしても声をあげて泣いた。


「泣くなこのバカ!いいから今すぐさやかさんのところに行って、土下座でもなんでもして謝ってこい!許してもらえるまで帰ってくるな!!」


受付嬢の厳しい言葉に、後輩は手を伸ばして彼に縋り付く。


「先輩、オレにお酒を!もう飲まずにはいられないっす」

「アルコールに逃げるな!現実を受け止めろ」


まさか後輩がこんなにヘタレだったとは知らなかったが、それを鬼のような形相で叱り飛ばす受付嬢の一面もまた、彼が知らなかったものだった。

更に言えば、知らなくてもいいと思っていたものだった。


「知らない面をどんどん知っていくことで、人と人は、仲良くなれるのではないですか」


唐突に聞こえてきた彼女の声に、彼は視線をそちらに向ける。

彼女は彼を見上げて、にっこりと笑っていた。