秋の月は日々戯れに


繰り広げられる攻防戦を、彼女は楽しそうに、受付嬢は呆然と眺める。


「えっと……放っておいていいんですか?」

「そうですね、そろそろ仲裁に行きましょうか。このままでは、お布団が使い物にならなくなってしまいそうです」


クスクスと楽しそうに笑いながら、彼女は二人に歩み寄る。


「その辺で止めておかないと、布団がビリビリに破けてしまいますよ」


その声に振り返った彼は、収まらない怒りをそのまま表情にのせて彼女を睨みつける。


「布団が裂けたら、こいつに一式弁償させます」


さっきから、話の中心が布団になっている。


「あの……お布団は責任を持って弁償させますので、ひとまずそこから離れませんか?」


問題は布団ではなくその中身の方ではないかと思ったがゆえの進言だったのだが、おずおずとした受付嬢の声に真っ先に反応したのは、彼でも彼女でもなく、布団の中の塊だった。


「……その声……」


布団がもぞもぞと動いたかと思ったら、さっきまで足があった方からひょっこりと顔が覗いて、後輩と受付嬢の視線が絡み合う。