秋の月は日々戯れに



「えっと……まず、仕事の事はごめんなさい。ただでさえ色々任されて大変なのに、あたしのせいで、本当はやらなくていいことまでやらなくちゃいけなくなって。でも、本当に仮病じゃないの。ただ、インフルエンザでもなかっただけで……」

「風邪か」


同僚の言う、他にも任されている色々も、彼にしてみれば本当はやらなくていいことを押し付けられているに過ぎないのだが、そこはあえて突っ込まずに、聞こえなくなった言葉尻をさらうように続ける。

同僚は、コクっと小さく頷いた。


「……朝電話したときは、確かに凄い熱だったの。だから時期も時期だし、やっちゃったかなって思ったんだけど」


その後体調が若干回復したところを見計らって病院に行ってみたら、診断結果はインフルエンザではなかったのだと説明する同僚に、彼は呆れたようなため息をついた。


「それなら、最初から熱があるから今日は休むでいいじゃないか。なんでインフルエンザだって自己診断してるんだよ」

「インフルエンザ並の高熱だったんだもん。その時上司に、もしインフルなら休む分有給使ったらどうだって言われて、そう言えばそろそろ消費して欲しいって言われてたなって思って……もう、これはインフルエンザってことでいいかなって……」