秋の月は日々戯れに


幽霊である彼女は、突然部屋が明るくなったからといって目がくらむことはないが、彼の方はその明るさに堪らず目を細める。

その瞬間、テーブルに思いっきり足をぶつけて、思わず痛みに顔が歪んだ。


「……大丈夫ですか?」


聞こえた痛そうな音に彼女が声をかけるも、それに答える余力が今の彼にはない。

途中でぼとっと落とした鞄は二つ、ようやく辿り着いたベッドに、彼は背中に担いでいたものをやや乱暴に下ろした。


「これは……新しい感じのお土産でしょうか」


隣に並んで、一緒にベッドの上のものを見下ろす彼女。

冗談のつもりで呟いたそのセリフに、彼は渇いた笑い声を返す。


「送り先がどうしても分からなかったから、持って帰ってくるしかなかった大荷物です」


二人が見下ろす先、ベッドの上で安らかに眠り続ける後輩は、一向に目を覚ます気配がない。

ひとまず荷物を下ろして軽くなった肩や首をほぐしながら、彼はベッドから離れて、途中で落とした鞄を一つだけ拾い上げる。