秋の月は日々戯れに



「先輩!このポテトサラダ、めっちゃ旨いっすよ。食べました?」

「いや、まだ。じゃあ、こっちの出汁巻きの皿とちょっと交換してくれ」

「どうぞ、どうぞ!玉子も旨そうっすね。オレ、玉子焼き大好きなんすよ」


お互いに遠くにあって箸が伸ばしづらい皿は時々交換し合ったりして、まんべんなく全ての料理が口に入る頃には、後輩は耳だけを真っ赤に染めて、四つ目になる徳利でお猪口を満たしていた。


「最初から思ってたが、お前ペース早すぎじゃないか?もう完全に酔ってるだろ」


ヘラっと笑った後輩は「そんなことないっすよぉー!」と答え、のれんの端から顔を出して、酒のおかわりを注文する。

始終楽しそうに飲んではいるが、そのあまりのハイペースさは、どこかやけ気味に酒を煽っていた同僚の姿を思い起こさせた。


「先輩も、おかわりどうっすかぁ?あっ、それともー、なにか料理追加します?」

「……いや、俺は大丈夫」


後輩の飲みっぷりに怪しい雰囲気を感じた彼は、ほろ酔いにも至ることなく、ウーロンハイと偽って烏龍茶を飲んでいる。

それに気がつく様子もない後輩は、やはり彼が怪しんだ通り相当に酔っ払っていた。


「それじゃあ先輩、かんぱーい!」

「……かんぱーい」