最後に小声で付け足された言葉を彼が聞き逃すはずもなく、先ほど勝ち誇っていた彼女への仕返しとばかりにそこを突く。
「そ、そう言うあなたはどうだったんですか!」
暗がりにぼんやりと白く浮かび上がる彼女の顔は、例え電気をつけていなくてもよく見える。
今ならば、例え見えていなくても声の調子だけで図星だと分かるけれど。
「普通ですよ。際立って良くもなく、悪くもなく。まあ、音楽だけはちょっと低かったですけど……」
「それは意外です。高校あたりでいきがってバンドを始めそうな雰囲気をしているのに」
「……バカにしてます?」
「いいえ、全く」と答えた彼女の声は、明らかに笑みを含んでいた。
「そういうあなたは、率先して委員長とか引き受けて、クラスで男子を迫害しては煙たがられていたように見えますけどね」
仕返しとばかりに彼が言い放った言葉に、案の定彼女は「失礼極まりないです!」と膨れた。
「それじゃあ、あなたはあれです!シャイ過ぎて女子に話しかけられないタイプ」
「バレンタインには義理を五つと、手紙付きの本命を二つ貰った事があります」
「この浮気者!!」
「……なんでだよ」



