秋の月は日々戯れに



「してやられました……」

「だから言ったでしょ」


ベッドの中で悔しげに呻く彼に、彼女は勝ち誇ったようにふふっと笑う。


「まさか、殺されたのが本当にただのそっくりさんで、バスの運転手が実は犯人だったなんて……そんなの反則でしょ」

「わたしは最初から見抜いていましたよ。あなたの推しは、やはり容疑者として一番に名前が上がりましたが、最終的には無実でしたしね」


嬉しそうな彼女の声を聞きながら、彼はまた「してやられた……」と呻く。

シングルベッドに二人で並ぶのは、生身の人間だと狭苦しく感じるが、相手が幽霊だと不思議とそんな気はあまりしない。

ただ、布団にくるまれているはずなのに異様に寒いのは、隣にいるのが幽霊なせいでもあるけれど。


「わたし、こういうの得意なんです。国語の成績はいつも“よくできました”の二重丸を貰っていました」

「犯人当てるのに国語の成績って関係あるんですか。あとそれ、いつの時代の話ですか。小学校?」

「中学の時だって、五段階評価で五以外を取ったことはありません!……国語に関しては」

「なるほど。理数系が壊滅的だったタイプですね」