「……湿布ってなんだか知ってますか?ただ冷たいだけじゃないんですよ、あれって。貼って皮膚から吸収させるタイプの、鎮痛・抗炎症剤ですからね」
「小難しいことはよく分かりません!わたしは医者ではありませんから。でも、そんじょそこらのお医者様よりずっと、あなたのことを想っています」
「……そんなんで治ったら、この世に医者は必要ないでしょうね」
「大丈夫です!わたしが責任を持って治してあげます」としがみつく彼女は、何を言っても無駄な雰囲気が漂っていたから、彼はそれ以上何も言わず、諦めたように深々とため息を付くに留めた。
「ちなみに、もう治ったから離してくださいって言ったら、離してくれますか?」
試しにそんなことを聞いてみたら「適当なこと言わないでください!」と怒られた。
仕方がないので、彼はテーブルの上からエアコンのリモコンを取り上げて設定温度を上げると、脇腹に彼女をしがみつかせたままコーヒーを啜る。
「動くときはちゃんと“動く”って前もって言ってください。患部からずれるじゃないですか」
エアコンのリモコンを取るために、腰を浮かせた事について非難を受けた彼は、小さくため息をついてから真下にある彼女の顔を見下ろす。



