秋の月は日々戯れに


いっそ、スキンシップを取らなければいいのではと思ったが、なぜだかそれは胸の内に浮かび上がっただけで、言葉にはならなかった。

労わるように頬に手を当てたまま、彼女が柔らかく微笑む。


「絆創膏、貼りますか?」

「大丈夫です。それより今は、湿布ですね」


湿布?と顔に疑問符を浮かべる彼女。


「正直、あなたにタックルされた脇腹の方が、すり傷よりもよっぽど痛みます。だから湿布です」


そのセリフを聞いた途端、いつもの調子で何か言い返そうと口を開いた彼女だったが、自分が悪いことは大いに自覚しているため、何も言えずにただパクパクと口を動かして、終いには頬から手を離して彼の脇腹へとしがみついた。


「……一応聞きますけど、何をしてるんですか」


この期に及んで、まだ動くと血が吹き出すなどと言い出すのか、いやそもそも脇腹は出血していないと思ったら、しがみついた体制のまま顔を上げた彼女は「湿布です!」と高らかに言い放った。


「湿布とは、冷たいものです。それならば、わたしのこの冷たい体でも、充分代用できるはずです!」


お腹に頬を押し付けるようにして、彼女は自分がタックルをかました辺りに腕を回す。