確かに、やんちゃの全盛期だった頃に比べれば年は取ったが、お年を召したはあんまりだ。
細胞にだって多少衰えはあるだろうが、まるでヨボヨボのおじいさんを相手にしているような言い方も彼にしてみれば看過できるものではない。
苛立ち紛れに彼がグイっとカップを傾けると、彼女の視線が再び頬の擦り傷へと移った。
「……痛いですか?」
彼女の問いかけに、思い出したように頬に触れると、ピリッとした痛みが走って思わず顔が歪む。
その瞬間なぜか同じように顔を歪めた彼女は、恐る恐る手を伸ばして、手の平で彼の傷口をそっと覆った。
熱を持った傷口に、ひんやりと心地いい冷たさが広がる。
「やっぱりこの体は、勝手が違いますね。感覚が乏しい分、わたしの力がどの程度あなたに伝わっているのか、想像するのが難しいです」
「だから力加減も、上手くできません」と言いながら、彼女がゆっくり膝立ちになる。
「でも次からは気をつけますね。もう二度と、大切な旦那様に怪我なんてさせないよう、細心の注意でもってスキンシップを図ります!」



