「あと少しでいけそうな気がするんですけどね」
何度も何度も伸ばした手に、けれど雪はひと欠片も止まらず、全て地面に落ちて淡く消える。
何気なく差し出した彼の手には、素通りすることなくすぐさま白い欠片が止まった。
あまりに自然過ぎて時々幽霊であるという根本を忘れそうになるが、ふとした拍子にその根本を、こうしてまざまざと見せ付けられる。
「とってもいいことを思いつきました!この雪が積もったら、雪だるまを作って玄関のところに飾りましょう」
けれど当の本人である彼女は、そのことを全く悲観している様子もなく、第二の人生とも言うべき幽霊ライフを満喫している。
「……何言ってるんですか。そんなことしたら、あっちからもこっちからも苦情が来るので却下です。第一、まだ雪だるまが作れるほど積もりませんよ」
すっかり溶けて消えてしまった雪の名残を握り締めるように手を握って、そのままポケットに押し込む。
コツっと当たったホットの缶から、じんわりと温かさが伝わってきた。



