秋の月は日々戯れに


さっきまで主導権はこちらが握っていたはずだったのに、いつの間にかそれが彼女の方へと移ってしまっている。


「……性格がよろしくないのはどっちだよ」


ボソッと呟いた声に、彼女が上目遣いに彼を見上げてニコッと笑う。


「夫婦は似るって言いますからね」


大変嬉しそうな彼女に「俺達は夫婦じゃありません」と返してから、ココアの缶ごと手をポケットにしまって、そのまま片手で暖をとる。


「せっかく貰ったホットコーヒーなのに、あなたのおかげで全くそのホットさを生かせません」

「代わりに、わたしが頂いたココアを飲んでもいいですよ」

「随分と上からですけど、結局飲むのは俺ですよね。あなたは飲めないんですから」


「そんなこと言うと、譲ってあげませんよ」と凄んでみせる彼女に「別に欲しいわけじゃありません」と返しながら、ポケットの中で缶を弄ぶ。


「どうせなら、カフェオレとかにしてくれたら良かったのに……」

「人様から頂いたものに文句をつけるのは、いかがなものかと思いますよ」


お説教めいた彼女の声を聞き流しながら、外灯がポツポツと灯る道を並んで歩いていく。